両親の話

亡くなった父は不器用そうに言ったものだ。

「お父ちゃんは何も強制せん。お前の好きなようにしたらええからな」

今、目の前にいる、認知症が進んでしまった母も、昔は

「こうでなかったらいかんというものはない」

などと言ってくれたものだ。

それだけの自由度と十分な教育をもらったおかげで、人並みの学を身につけ、それなりの職をえて、それなりに生きている。自分の目標は、誰からも尊敬される一流の人間になることだったけれども、残念ながらその域にたどり着いたとはいいがたい。一流の人々の実績を間接的ながら目にするけれども、その差は圧倒的だ(だいたい桁が一つくらい違う)。おそらく自分が本当にしたいことに対して、勇気をもって飛び込み、努力を惜しまず取り組んだ結果だろう(彼らは努力したという自覚すらなかったかもしれないが)。臆病な自分はそれができなかったし、努力も足りなかったのだろう。

こうなると、親からもらうものだけもらって、何もできなかったというのは心苦しい限りだ。せめて、次の世代に、自分が親から受け継いだのと同じ程度のものだけでも引き渡すのが義務だと思うのだろうけれども、未だ独身。奥さんが来てもらえる目途はなし。

いや、ほんと、ごめんなさいですわ